理事長挨拶

一般社団法人日本放射線影響学会 理事長

      大阪大学大学院医学系研究科 教授   藤堂 剛

 この度、量子科学技術研究開発機構明石真言執行役におかれましては、日本放射線影響学会第60回大会長をお引き受けいただき、会員を代表してお礼申しあげます。

 本学会は、昭和29年太平洋ビキニ環礁において米国により実施された水爆実験で被災した第五福竜丸事件を契機に設立され、今回で60回大会となります。放射線の人体と環境に与える影響を、物理・化学・工学・生物学・医学といった分野横断的研究者の集まりとして本学会は発足しましたが、学際的な特徴を活かし、単に放射線の人体・環境影響を評価するのみでなく、その生体影響の根本要因を生物の基本原理に基づき理解する基礎学問としての一面を拡充させ、応用と基礎との間を繋ぐ領域として発展してきました。しかしながら、この10年余りの間に,本分野に限らず我が国の研究環境は大きく変わりました。実学的な研究がより重視され、より強く社会貢献が問われるようになってきています。研究対象への興味と社会要請は常に一致するわけではなく、研究者にとっては、より厳しい時代になってきたといえます。ただ、実学的応用・社会的要請に応えるには、基礎科学の充実が必須です。基礎科学の充実無くしては、実学応用も種が尽きてしまいますし、社会貢献も厚みの無いものになってしまいます。また、実学重視に加え、研究そのものが画一的になってきています。はやりの学問が重視され、方法論的にも全ての領域で類似した発想での同一の技術を使った研究ばかりになってしまいます。流行の学問を追う流れは、各領域特徴的な基礎研究を評価されにくくしています。これでは学問全体の広がり・深さが無くなってしまいます。この様な現状においては、研究者が今一度各領域の原点を見直すとともに、各領域の特徴に基づいた発想を最先端技術により切り拓いていく事は極めて重要です。今大会では、明石大会長より「放射線影響学会の設立の原点に立ち返って理念と歴史を見返す事」を基本テーマとして設定いただきました。60回記念大会にふさわしいテーマであり、本領域のこれからの更なる発展の基盤になるのではないかと期待しております。

 本大会は4日間とこれまでより1日長い開催になります。また、60回記念式典も会期中に開催されます。世代を超えた会員が一堂に会する事により、本学問分野の基盤に新たな光をあてる事ができるのではないかと期待しております。どうか会員諸氏におかれては、闊達な議論により実り大きな大会として盛り上げ、今後の放射線影響学の発展に寄与していただくよう心からお願い申し上げます。

大会長挨拶

日本放射線影響学会第60回大会 会長

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 執行役   明石 眞言

 日本放射線影響学会第60回大会を、平成29年10月25日(水)より28日(土)までの4日間、千葉市の京葉銀行文化プラザにて開催する運びとなりました。

 今回は、第60回記念式典を10月27日(金)に合わせて開催し、原点に立ち戻り、これまでに辿ってきた道を振り返り、今後の影響研究の方向性を改めて考える絶好の機会としたいと思います。日本放射線影響学会大会の千葉市での開催は、1965年の第8回大会、1984年の第27回大会、1995年の第38回大会、2007年の第50回記念大会に次いで5回目であり、10年ぶりとなります。放射線影響の研究者の高齢化と減少が叫ばれる一方、放射線影響の必要性は、益々増大しております。放射線影響研究は、我々人類が放射線を利用し続ける間は止めることができない領域であり、様々な技術や手法を取り入れることが出来る分野です。千葉市は、日本のロケット開発の地であり、1955年西千葉の東京大学生産技術研究所の糸川英夫博士らは、日本で始めてのロケット「ペンシルロケット」の発射実験を開始しました。また古くは、1912年5月我が国初の民間飛行場が稲毛海岸に開設されるなど、民間航空発祥の地でもあります。医学は言うに及ばず、宇宙や地球科学の若手の研究者も参加したい、という研究領域にする機会になることを願っております。

 今回の大会のテーマは、“生命を護るもの、攻めるもの、放射線”としました。医学での放射線利用は、言うまでもなく生命を護るものとしての放射線であり、一方では、生命を攻めるものとしての放射線障害があり、その利用と攻撃からの防護はこれからも続くテーマです。日本放射線影響学会第60回大会は、このようなコンセプトのもとに新しい企画も含めプログラムを準備しています。特別講演は、京都大学名誉教授 新山陽子先生(現立命館大学教授)と慶応義塾大学名誉教授 須田年生先生(現国立シンガポール大学教授)にお願いしました。当学会の目的は、基礎研究とその結果の社会へ還元です。新山先生はリスクコミュニケーションがご専門で、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故後は、ご専門の食品と放射線をテーマにご活躍をされています。須田先生は幹細胞研究の前線におられ、放射線影響研究に新風を吹き込んで頂けたら、と思います。ワークショップ・シンポジウムでは、基礎的研究ばかりでなく世界保健機関WHO、原子放射線の影響に関する国連科学委員会UNSCEAR、国際原子力機関IAEAからも専門家をお招きし、国際社会が見た我が国放射線影響研究を議論する機会を持つ予定です。

 今大会は、量子科学技術研究開発機構との共催、また千葉市、千葉市教育委員会、日本医師会、ちば国際コンベンションビューロー等からご後援を頂いております。学会は社会とともに歩むことが求められます。日本放射線影響学会では、例年の大会で恒例になりましたが、当大会でも市民講座を開催致します。今年は作家で作詞家でもあるなかにし礼先生をお招きし、放射線と先生との関わりについて、お話し頂くことになっております。先生は戦後日本を代表する作詞家であると同時に、2000年長崎ぶらぶら節で「第122回(平成11年度下半期) 直木賞受賞され、最近は自ら受けられた放射線によるガン治療のご経験もあります。

 今後の研究、社会のニーズに役立つような学問的にも充実し、有意義な学会にすべく精一杯努力させて頂きたいと考えております。会員の皆様のご支援とご協力をよろしくお願いいたします。多くの皆様のご参加を心より歓迎したいと思います。

大会事務局 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構内

〒263-8555  千葉県千葉市稲毛区穴川4-9-1 e-mail:ml-jrrs60kinen@qst.go.jp